医学物理士試験対策~放射線診断物理学~ オススメ教科書もご紹介

医学物理士

放射線診断物理学は範囲が広く、その割に深い部分まで聞いてくるのでしっかりと対策をしないと点数を稼げません。

また、臨床を経験してない人にとっては苦労する科目です。

今回は、そんな放射線診断物理学の対策として、最近よく出る問題を中心に効率よく勉強を進めていけるようにまとめてみました。

 

医学物理士試験合格に必要な勉強量・勉強法

 

この記事を読んでほしい人

・放射線診断物理学を効率よく勉強してい人
・臨床経験がなく不安な人
・放射線診断物理学のオススメの教科書を知りたい人

 

重要度の概要

☆☆☆
試験に頻繁にでるもの。必ず覚えるべき

☆☆
1~2回程度出題されていて、覚えた方がよいもの


たまに出るもの。

 

 

重要度☆☆☆

・X線管球について
・MRIのアーチファクトと対策について

 

重要度☆☆

・超音波診断装置について
・MRIのパラメーター決定因子について
・診断用X線

 

重要度☆

・グリッドについて
・マンモグラフィの品質管理について

 

 

医学物理士試験の放射線診断物理学対策

 

重要度☆☆☆

 

X線管球について

 

ターゲット角度

・実焦点面と基準軸とがなす角度
※実焦点は実効焦点より大きい
※実焦点および実効焦点は低管電圧、高管電流ほど大きくなる
ブルーミング効果:X線管の焦点サイズが管電流によって変化する現象
・ターゲット角度が小さいほど、実焦点面積は大きくなる
・ターゲット角度が小さいほど、ヒール効果は著し良い

主焦点と副焦点

主焦点:フィラメントの前面から発生した熱電子によって形成
副焦点:側方および後方から発生した熱電子によって形成
・電子密度は主焦点の方が大きい
・副焦点は集束電極の溝幅が狭いほど大きくなる

 

焦点外X線

・焦点に衝突する高速電子によって発生した2次電子が焦点面以外のターゲット面に衝突して生じる
・コントラストを低下させる
焦点近傍で多く、離れるほど減少
焦点近傍で最も軟質、離れるほど硬質
・回転陽極管の方がターゲット面積が大きいため、固定よりも多い
・管電圧が大きいほど全X線量に占める比率は高い
・鮮鋭度を低下させる
・高エネルギーほど焦点から遠くへ飛ぶ

 

MRIのアーチファクトと対策について

 

モーションアーチファクト

・体動によりぶれたような画像
・位相エンコード方向に生じる
対策:呼吸同期、飽和パルスの印加

 

フローアーチファクト

・拍動性の血流により、画像の広い範囲に縞が入る
対策:飽和パルスの印加、信号加算回数の増加

 

折り返し(エリアシング)アーチファクト

・撮像範囲外の部分が、本来あるべき方向と反対側から画像に入り込む
対策:表面コイルの使用、FOVを大きくする、位相方向の過剰サンプリング

 

打ち切りアーチファクト

・鮮明な境界周囲にさざ波状の縞が入る
対策:周波数及び位相エンコード数を増やす、FOVを小さくする

化学シフトアーチファクト

・特定臓器、組織の像が周波数エンコード方向にずれて描出
・脂肪に富んだ部位に発生
対策:静磁場強度を下げる、バンド幅を広げる、脂肪抑制を併用

 

クロストークアーチファクト

・隣り合うスライス間で起こる干渉で生じる
対策:スライス間隔を十分にとる、SNRを増加させる

 

磁化率アーチファクト

・磁化率効果により信号強度に変化が生じる
対策:TE短縮、TR短縮、SNR低減、薄いスライス厚、小さいピクセルサイズ、スピンエコーの併用、広い帯域幅

 

ゴーストアーチファクト

・大動脈などの周期的な動きによるアーチファクト
対策:TRを長くする、位相エンコード数を増やす、加算回数を増やす

 

 

重要度☆☆

 

超音波診断装置について

 

超音波診断装置の構成

 

音響レンズ

・超音波ビームを収束するもの
・シリコンゴムなどが用いられる

 

整合層

・超音波をより生体内に効率的に伝播させるもの

 

振動子

・圧電効果を利用して超音波の送受信を行う
・チタン酸ジルコル酸鉛が使われる

 

バッキング材

・振動子後方に放射した音響エネルギーを速やかに消散させ、振動を吸収する仕組み
・超音波のパルス幅がみじかくなり、距離分解能向上

超音波診断装置の超音波の特性

・周波数は1~15MHz
・平面波として直進した後、球面波として広がる
・生体の軟部組織の平均速度は1530m/s
・減衰は距離と周波数に比例
・反射強度は音響インピーダンスの差
※音響インピーダンスは、骨>筋肉>血液>水>脂肪>空気の順
・音響インピーダンスは密度と音速の積

超音波画像の表示

 

Aモード

・横軸を深さ、縦軸を反射強度として表示

 

Bモード

・反射信号強度を輝度に変換し、断層像を表示

 

Mモード

・反射対象と探触子との距離の時間経過を表示
・心エコーなどに用いられる

 

Dモード

・ドプラ効果により周波数変位を解析表示
・血行動態を見るのにつかわれる

 

 

MRIのパラメーター決定因子について

 

スライス厚

・RFパルスのバンド幅が広いほど、スライス厚は厚くなる
・傾斜地場の勾配が急なほうが、スライス厚は薄くなる
スライス厚=送信バンド幅÷傾斜磁場強度

 

空間分解能

・FOVを小さくすると空間分解能向上
・マトリクスサイズを大きくすると空間分解能向上

 

SN比が高くなる因子

静磁場が強い
信号加算回数が多い
スライス厚が厚い
ピクセルサイズが大きい
TRが長い
TEが長い
FOVが大きい
バンド幅が狭い
※SN比=(コイル効率×静磁場強度×ボクセルサイズ×√計測回数)÷√受信バンド幅

FOV

・FOV=受信バンド幅÷傾斜地場強度

 

診断用X線

 

特性X線

・軌道電子の遷移によって発生
特性X線のエネルギーはターゲットの原子番号のみに依存し、高いほど高い
=モーズリーの法則
・マンモでは15~25keVの低エネルギーX線を選択的に取り出すためK特性X線を利用

 

制動X線

・入射電子と原子核とのクーロン力による制動により発生
・定電圧X線発生装置で発生する制動X線は連続スペクトル
・制動X線のX線スペクトルに関する式をKramersの式という
制動X線の発生強度は、原子番号・管電流・管電圧の2乗に比例
制動X線の発生効率は、原子番号・管電圧に比例

重要度☆

 

グリッドについて

 

グリッドの特性

・散乱線を除去し、コントラストを改善する目的に使用
・グリッド比が大きいと、散乱線除去率が大きい
・形式にはブッキーブレンデ(移動型)とリスホルムブレンデ(静止型)がある
・スペーサにはAl、木、カーボン、空気などが使用される
グレーデル効果(エアギャップ効果)
→被写体‐受光系距離が大きいほど受光系への散乱線の入射が減少する効果

グリッドに関する用語

 

グリッド密度:グリッド中心部のおける1cmあたりの鉛箔の数
グリッド比:グリッド中心部における鉛箔の高さと間隔の比グリッド密度=1/(D+d)
グリッド比=h/D
D:鉛箔の間隔、d:鉛箔の厚さ、h
選択度=TD/Ts
コントラスト改善度=TP/Tt
露出倍数=1/Tt
イメージ改善度=TP2/Tt
1次X線透過率TP=IP’/IP
全X線透過率Tt=It’/It
散乱X線透過率TS=(It’-IP’)/(It-IP)
散乱X線含有率=IS’/It’×100(%)
IP:グリッドに入射する一次X線の強度
IS:グリッドに入射する散乱X線の強度
It:グリッドに入射する全X線の強度
IP’: グリッドを透過する一次X線の強度
IS’: グリッドを透過する散乱X線の強度
It’: グリッドを透過する全X線の強度

 

 

マンモグラフィの品質管理

 

X線装置とシステムの評価を1年ごとに行う

それぞれの評価項目は以下の通りです

 

X線装置の評価

・装置各部の動作確認
・X線照射野、光照射野、受光器面の整合性
・胸壁付近の画像欠損確認
・管電圧の精度と再現性
・焦点の性能
・線質
・AECの性能
・X線の出力

システムの評価

・平均乳腺線量
・アーチファクトの評価
・受像系の感度ばらつき

医学物理士試験の放射線診断物理学を学ぶときにおススメの教科書

放射線診断物理学の教科書は結局何がいいの?

実際に放射線診断物理学はCTやMRI、一般撮影など範囲が広いです。

しかし、CTは得意だからMRIだけ補強したい。など、一部だけを詳しく知りたい人におススメの教科書は

一目でわかるMRI超ベーシック (日本語) 単行本 – 2017/1/30


一目でわかるMRI超ベーシック [ キャサリン・ウェストブルック ]

CT super basic (日本語)


CT super basic [ 市川勝弘 ]

CTとMRIはそれぞれ以上の教科書をオススメします。

全体的に学びたい場合は、

放射線診断物理学 (医学物理学教科書) (日本語) 単行本 – 2017/3/31


放射線診断物理学 (医学物理学教科書シリーズ) [ 松本政雄 ]

をオススメします。

ご自身の予算と理解度を考慮したうえで選ぶとよいでしょう。

 

医学物理士試験の放射線診断物理学につまずいてる人へ

 

放射線診断物理学は範囲が広く、意外と苦手としている人が多い科目です。
しかしそこでしっかり得点が稼げると合格にぐっと近づきます。
すでに臨床で働いている人は、経験したことがないモダリティを重点的に学べばいいのでおススメの教科書などで効率よく勉強しましょう。

範囲は広いけど、頻出問題もあるのでそこはしっかりと取るようにしましょう

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