医学物理士試験対策~放射線治療物理学~ オススメ教科書もご紹介

医学物理士

医学物理士試験において放射線治療の分野はマーク式、記述式両方に出題され、重要な科目の一つです。
また、放射線治療物理学は医学物理士になってから使う人も多い科目です。

ただ、まだ臨床を経験していない人にとってはどこから勉強すればいいのか迷うところです

 

今回はそんな放射線治療物理学をよく出る問題を中心にまとめました。

医学物理士試験合格に必要な勉強量・勉強法

 

この記事を読んでほしい人

・治療物理学をどう勉強すればいいか迷っている人
・臨床経験がなく治療の勉強が進まない人
・放射線治療物理学のオススメの教科書を知りたい人

 

重要度の概要

☆☆☆
試験に頻繁にでるもの。必ず覚えるべき

☆☆
1~2回程度出題されていて、覚えた方がよいもの


たまに出るもの。

 

 

重要度☆☆☆

・リニアック装置の構造
・線量分布の取得法について

重要度☆☆

・治療用密封小線源の種類
・粒子線治療について

 

重要度☆

・IMRTについて

 

重要度☆☆☆

 

リニアック装置の構造

 

マイクロ波発生装置

 

マグネトロン

・陰極から出る熱電子が磁場と電場の影響を受けて複雑なスパイラル軌道で陽極まで飛び、電磁波を放射する

・電磁波がウェーブガイドシステムによって加速管へ送られる

・出力電力が弱く6MV以下のリニアックに使用

・回転可能でガントリーに設置できる

 

クライストロン

・陰極から出た熱電子が入力された低エネルギーのマイクロ波を増幅し出力

・X線を放出するので装置は金属製の遮蔽容器内に設置

・多くの高エネルギーリニアックに使われる

導波管

・マイクロ波は導波管を介して加速管に供給される

・導波管内には放電を防ぐためにSF6が封入されている

 

加速管

 

進行波型

・加速器の内部にディスクが置かれ、加速につれて位相速度が変化

・距離を長くすればするだけ高エネルギーの加速が可能

 

 

定在波型

・球面構造の加速空洞とリエントラント形の結合空洞からなる

・ドリフト管間に電界が生じ、電場の半周期ごとに方向が反転

・電子が円筒内に存在すれば、ドリフト管間の電界で加速が可能

 

※加速管に入射する電子ビームのエネルギーは約10~70kV

 

X線照射時のノズル内の順序

①ターゲット

②プライマリーコリメータ

③フラットニングフィルタ

④イオンチェンバー

⑤二次コリメーター

ターゲット

・タングステンなどの高原子番号物質

・制動放射で電子からX線が発生

・発生したX線の平均エネルギーは元の電子線の1/3

 

フラットニングフィルタ

・ビーム強度を一様にする

イオンチェンバー

・線量率、線量、ビームの対称性を確認するためのもの

・多くの場合大気遮蔽型の電離箱が使われ、温度気圧に影響しない

電子線照射時のノズル内の順序

①プライマリーコリメータ

②スキャッタリングフォイル

③イオンチェンバー

④2次コリメーター

⑤電子線アプリケータ

 

 

スキャッタリングフォイル(散乱箔)

・電子線を広げ、フルエンスを一様にする

・薄く伸ばした鉛などが用いられる

・制動放射が起き、ほんの少しX線が混ざってしまう

電子線アプリケータ

・散乱して広がりやすい電子線の照射野を体表近くで形作るもの

 

MLC

・腫瘍形状に合わせた照射野をつくる

・Jawの代わりに用いられることもある

 

MLCの関連用語

 

ラウンドリーフ

・MLC先端が丸くなっている状態をラウンドリーフという

・半影の幅がMLCの位置にあまり依存しない

・放射状のMLCよりも半影の幅が少し広い(1-3mm)

・向かい合うリーフが閉じているときのMLC先端からの透過線量が多い

・光照射野よりも実際の照射野がわずかに広くなる

Tongue & groove構造

・隣り合うMLCの間からの透過線量を減らすための構造

・隣り合う二つの照射野の切片付近は線量が低くなる
→Tongue & groove効果

 

 

線量分布の取得法について

 

深部線量分布

・吸収線量は深さとともに変化する

・エネルギー、深さ、照射野サイズ、線源からの距離に依存

・リファレンス線量計を用いることで出力の瞬間的なドリフトを除去

・リファレンス線量計はフィールド線量計のスキャン範囲上に設置してはならない

・スキャン速度を遅くするとノイズの割合は小さくなる

PDD(深部線量百分率)

PDDは線質、エネルギー、深さ、照射野サイズ、SSDに依存

・エネルギー大きくなる
→dmaxより深部でPDDが透過しやすくなるため大きくなる
表面線量小さくなる
dmax大きくなる

・照射野サイズ大きくなる
→dmaxより深部でのPDDが散乱により大きくなる

・SSD大きくなる
→PDD距離の逆二乗則により大きくなる

 

重要度☆☆

 

治療用密封小線源の種類

 

線源 半減期 平均エネルギー
Co-60 5.3年 1.25MeV
Ir-192 74日 361keV
Cs-137 30年 662keV
I-125 59.4日 28keV
Pd-103 17日 21keV
Au-198 2.7日 416keV
Ra-226 1620日 0.18-2.2MeV

 

 

使用目的

 

使用目的 線源
胆管(胆道)がんの腔内照射 Ir-192
子宮頸がんの腔内照射 Co-60
前立腺がんの組織内照射 I-125
歯肉がんや硬口蓋がんのモールド法 Au-198
舌癌、口腔底癌、頬粘膜癌の組織内照射 Cs-137,Au-198

 

線量率による分類

 

線源
高線量率(12Gy/h以上) Iu-192,Co-60
中線量率(2-12Gy/h) Cs-137
低線量率(0.4-2Gy/h) I-125,Pd-103

 

 

 

ここではよく出る小線源や実際に過去出題された分類についてまとめたよ

 

 

粒子線治療について

 

 

炭素線治療の特徴

・真ちゅう製のコリメータとポリエチレン製のボーラスを用いる

・炭素線ではリッジフィルタを設計しRBEを平坦にする

・炭素線のSOBP内のLETは深さとともに増加し、RBEも増加

・陽子より重い炭素は多重散乱の影響が小さいためペナンブラが小さい

・電離量は飛程の終端付近で大きくなる
→ブラッグピーク

・加速器はシンクロトロン

・核破砕反応により10%程度余分な線量付与がある

 

 

陽子線治療の特徴

・深部線量分布はブラッグピークを持つため腫瘍に限局した治療が可能

・RBE,OERはX線とほぼ同じ

・陽子線は入射核破砕反応を起こさない

・加速器は主にシンクロトロンまたはサイクロトロン

・回転ガントリを用いることがある

照射野形成法

 

横方向

・ワブラー法:電磁石によってビーム軌道を変化させて散乱体を通過させ、散乱させることによって照射野を広げる

・コリメータを用いて形状を腫瘍に合わせる

 

深さ方向

・リッジフィルタまたはレンジモジュレーターを用いて拡大ブラッグピークを作る

・ボーラスを用いてビーム末端の形状を腫瘍に合わせる

 

 

粒子線治療の飛程

・炭素線は1核子あたりの最大エネルギーは400-430MeV/u程度で水中での飛程は30cm

・運動エネルギーが同じなら炭素線は陽子線の1/3の飛程

・陽子線の水中での飛程は100MeVで約7cm、200MeVで約25cm

・阻止能の逆数をエネルギーで積分することで得られる

 

陽子線照射装置の照射までの流れと役割
①第一散乱体(陽子線を広げる)
②occluding ring(中心部を遮蔽)
③第二散乱体(平坦な部分を作る)
④ファインディングレーダー(エネルギーの微調整)
⑤リッジフィルタ(実効エネルギーの調整)
⑥コリメータ(がんの形状に合わせる)
⑦ボーラス(線量分布の調整)

重要度☆

 

IMRTについて

 

IMRTの治療計画

・インバースプランに基づき計画

・線量計算アルゴリズムとして、2次電子の飛程の変化が考慮可能なsuperposition法などを用いる

・計算グリッドは2mm程度と小さなものを利用

・MLCを活用して照射時間を調整し、ビーム強度=フルエンスを最適化

 

関連用語

Step and shoot法

・複数の照射野を組み合わせて照射する方法

・照射時MLCは静止

 

Interplay effect

・照射中に照射野形状が変化すると、辺縁部に加えて照射野内部で線量分布のボケが生じる

Tongue and groove effect

・セグメントごとに照射野形状が変わると線量分布に線量欠損を起こす

 

Over shoot phenomenon

・最初のセグメントでオーバーシュートし、最後のセグメントでは既定のMUで遮断され過小照射となる

医学物理士試験の放射線治療物理学を学ぶときにおススメの教科書

 

放射線治療の教科書って専門的過ぎて難しいよね
頭に入りにくいんだよなー

医学物理士試験の対策に使用する教科書と、実際に臨床で必要になってくる教科書は違います。

職場の先輩におススメの教科書を聞いたら、全く思ったのと違った経験があると思います。

そんな方にお勧めする教科書は

 

放射線治療基礎知識図解ノート


放射線治療基礎知識図解ノート 図,表,画像が満載!要点がわかる! [ 磯辺智範 ]

 

別記事の 医学物理士・放射線技師におススメの放射線治療の教科書3選
でも紹介してますが、こちらの教科書をオススメします。

オススメする理由としては

・基礎から応用まで網羅している

・ほかの教科書に比べて式のみではなく図や言葉でわかりやすくまとまっている

・章末に練習問題があり知識のアウトプットにも対応

といった理由で実際に放射線治療の教科書として、オススメです

実際に治療に携わるようになってから、医学物理士試験を経て今でもたまに確認がてら見ることもある教科書だよ
長く使えるのも考えると費用対効果がバツグンだね

医学物理士試験の放射線診断物理学につまずいてる人へ

医学物理士試験の放射線治療物理学は記述試験にも出るのでしっかりと対策していかなけらばいけません。

少しでも効率よく、知識を増やしていかないと試験に間に合いません。

そのためにも変に教科書選びや過去問の答え探しで時間を取られないように、今回の記事では頻出問題についてまとめ、おススメの教科書も紹介させていただきました。

 


放射線治療 基礎知識図解ノート

働くことになってからも関係してくる分野だから頑張っていきましょう。

 

医学物理士になろう 試験勉強から合格までの道のりまとめ

 

 

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