医学物理士試験対策~核医学物理学~ オススメ教科書もご紹介

医学物理士

 

医学物理士になる人はほとんどが放射線治療を勉強しているでしょう。

しかし、医学物理士試験ではそれと同じくらいの問題量と点数を占めているのが核医学です。

臨床でやったことがない人にとっては、国家試験くらいでしかお目にかかることがない内容でなかなかとっかかりにくい科目です。

今回はそんな人に向けて、とっかかりになるように医学物理士試験の核医学物理学の試験対策とオススメの教科書を紹介していきます。

医学物理士試験合格に必要な勉強量・勉強法

この記事を読んでほしい人

・核医学物理学の対策をしたい人
・あまり核医学になじみがない人
・核医学のオススメの教科書を知りたい人

重要度の概要

☆☆☆
試験に頻繁にでるもの。必ず覚えるべき

☆☆
1~2回程度出題されていて、覚えた方がよいもの


たまに出るもの。

重要度☆☆☆
・主な核種の物理学的半減期
・無機シンチレータ

 

重要度☆☆
・ガンマカメラ用コリメータについて
・ガンマカメラの性能評価について
重要度☆
・SPECTの画像再構成

 

医学物理士試験の核医学物理学対策

 

重要度☆☆☆

 

主な核種の物理学的半減期

 

11C 20分 57Co 270日 81mKr 13秒 131I 8日
13N 10分 59Fe 45日 82Rb 1.3分 133Xe 5日
15O 2分 62Cu 9.7分 99mTc 6時間 137Cs 30年
18F 110分 67Ga 78時間 111In 2.8日 201Tl 73時間
51Cr 30日 68Ga 68分 123I 13時間

 

過去問に出題されたものや、有名なものをまとめたものです。

 

無機シンチレータ

 

ガンマカメラ(SPECT)用

・主にNaI(Tl)シンチレータ(タリウム活性化ヨウ化ナトリウム)を使用
・厚さは99mTc(141kV)をほぼ100%検出できるように9mm厚を使用
・SPECT/PET兼用では、消滅γ線(511kV)を効率よく検出できる25㎜厚を使用
・シンチレータが厚いほど感度が向上(空間分解能が劣化)
・欠点として潮解性、急激な温度変化(3℃/時)に弱い

PET用

・BGO(Bi4Ge3O12)、LSO(Lu2SiO5:Ce)、GSO(Gd2SiO5:Ce)などが使われる
・原子番号が大きく潮解性がなく小型化が可能なものを使用。
・BGOがNaI(Tl)と比較して、エネルギー分解能が良い
・高感度、早い蛍光減衰時間、大きな蛍光出力、優れたエネルギー分解能が高感度のシンチレーター
・DOIはシンチレータ内の相互作用の位置を検出

あわせて蛍光減衰時間も覚えておくといいよ

 

蛍光減衰時間 蛍光減衰時間
NaI(Tl) 230ns GSO 60ns
BGO 300ns LaCl3 26ns
LSO 40ns LaBr3 35ns

 

重要度☆☆

 

ガンマカメラ用コリメータについて

 

イメージ 視野 目的
平行多孔型 不変 不変 プラナー像、SPECT像
ピンホール型 拡大 縮小 極めて小さい臓器
ファンビーム型 横拡大 縮小 SPECT専用
バイラテラール型 不変 不変 小さい臓器
スラントホール型 不変 不変 SPECT用
ダイバージング型 縮小 拡大 対象が大きいとき
コンバージング型 拡大 縮小 対象が小さいとき

 

※ピンホール型は距離に比例してイメージを拡大できる

 

ガンマカメラの性能評価について

 

使用する線源

性能試験項目 性能試験項目
点線源 固有均一性

固有空間分解能

固有エネルギー分解能

固有直線性

総合空間分解能(散乱体なし)

システムアライメント

線状線源 総合空間分解能(散乱体あり)

画像重ね合わせ精度

円柱状線源 総合容積感度

検出器‐検出器感度偏差

面線源 総合感度

透過率

 

使用するファントム

ファントム 性能試験項目 ファントム 性能試験項目
UFOVマスク 固有均一性

固有空間分解能

固有エネルギー分解能

固有計数率特性

鉛シールド 固有均一性

固有空間分解能

固有エネルギー分解能

固有計数率特性

固有直線性

スリット 固有空間分解能

固有直線性

板状散乱体 総合空間分解能
鉛コリメータ 複数ウインドウのずれ

遮蔽能力

円形散乱体 総合計数率特性(散乱体あり)
銅版 固有計数率特性

 

使用するコリメータ

性能試験項目 性能試験項目
コリメータなし 固有均一性

固有空間分解能

固有エネルギー分解能

固有計数率特性

固有直線性

複数ウインドウのずれ

SPECTに

使用する

コリメータ

総合空間分解能

(散乱体有+無)

総合容積感度

検出器‐検出器感度偏差

画像重ね合わせ精度

低エネルギー 総合計数率特性

(散乱体あり)

各エネルギー領域のコリメータ 遮蔽能力
臨床に使用する

コリメータ

総合感度

透過率

高分解能 システムアライメント

 

主なガンマカメラの評価法

 

固有均一性
・UFOV及びCFOVに対して積分均一性及び微分均一性を算出
・低下原因として光電子増倍管の経時的感度変化とシンチレータの劣化

UFOV(有効視野)
測定可能な視野CFOV(中心視野)
UFOVの形状を75%に縮小した領域
面積重心位置がUFOVと同じ位置にある測定視野の中央部分

 

固有空間分解能
99mTc点線源をUFOV最大径の5倍の距離に設置
・鉛スリットファントムを検出器前面に設置
総合空間分解能
・コリメータを設置して計測
99mTc点線源(2本、5cm間隔)をコリメータ前面に設置

 

固有空間直線性
・コリメータ無しで、検出器前面にスリットファントムを設置して幾何学的歪みを計測
・UFOV最大径の5倍の位置に99mTc点線源を設置
・固有空間微分直線性と固有空間絶対直線性を算出
・主な劣化原因は、光電子増倍管の増幅度の変動とシンチレータの位置ずれ
固有エネルギー分解能
・コリメータ無しで、得られるエネルギースペクトルのFWHMを算出
・UFOV最大径の5倍の位置に99mTc点線源を設置

 

 

重要度☆

 

SPECTの画像再構成

 

SPECT画像再構成の順番は以下の通り

 

①投影データ
②前処理フィルター
③減弱補正(前処理の場合)、散乱補正
④画像再構成
⑤減弱補正(後処理の場合)
⑥SPECT画像

 

前処理フィルター

 

バターワースフィルタ

・低域通過型フィルター
・遮断周波数より高い周波数(ノイズ)を通過させない
・使用する際は、遮断周波数と次数を決める

ウィナーフィルタ

・中高域強調型
・特定の周波数を強調して、ボケを補正
・バターワースフィルタと組み合わせて用いることが多い

減弱補正

 

Soreson法(前補正法)

・被写体断面が円または楕円、吸収係数と体内の放射性医薬品の分布が一様と仮定
・投影線状を横切る吸収体の長さと吸収係数に基づいて補正
・対向する投影データを加算平均して指数関数的な減弱係数を考慮して補正

 

Chang法(後補正法)

・減弱の影響がないと仮定して画像再構成を行い、再構成画像に各画素ごとに補正係数を乗じて補正
・被写体サイズが20cmを超えてくると画像中心部が過補正される傾向がある
・頭部SPECT画像に対して利用される

 

散乱補正

 

DEWS法

・光電ピークに設置されたメインウインドウの他に、コンプトン散乱領域にサブウインドウを設定
・サブウインドウで収集された散乱線成分と空間分布が同じで、大きさだけが異なると仮定して重みづけ係数を乗じて光電ピークのカウントから減算する

 

TEW法

・光電ピークの両端にサブウインドウを設定
・メインウインドウ内の散乱成分を推定

 

画像再構成法

 

FBP法

・すべての角度の投影データに対して処理を行うことで断層画像を得る
・フィルタには、Rampフィルタ、Shepp-Loganフィルタが用いられる
・画素値の総和はフィルタの設計によるため保存されるとは限らない
・1回の計算で画像作成できるため計算時間が短い
・ストリークアーチファクトが発生する

 

逐次近似法(ML-EM法)

・繰り返し計算を行うことでより確からしいあたいに収束するまで行う
・収集カウントが少なくてもS/N比が優れる
・繰り返し計算に長い時間を要する
・吸収、散乱、分解能補正を画像再構成の過程に組み込むことが可能

 

逐次近似法(OS-EM法)

・ML-EM法にSubsetの概念を取り入れ高速化を可能にした
・ML-EM法より最尤推定解の収束が早い
・リミットサイクルと呼ばれる周期解に収束
→統計ノイズが大きくなる
周期的に変動する

ML-EM法とOS-EM法の違い

ML-EM
・計算時間が長い
・低周波成分の収束が早い

 

OS-EM法
・計算時間が短縮
・Subsetを多くすると高周波成分の収束が早くなる

医学物理士試験の核医学物理を学ぶときにお勧めの教科書

 

核医学の教科書って工学系を網羅するものってなかなか見つからないんだよなー

そんな人におススメする教科書は

核医学物理学 (医学物理学教科書)


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こちらの教科書は医学物理士試験のテキストと言っても過言でないほど試験の範囲を網羅しています。
また、核医学の教科書を買っても臨床や生物系の内容で、物理工学の内容を学びたい人におススメする一冊です。

医学物理士試験の核医学物理学につまずいてる人へ

核医学は医学物理士試験でたくさんのウエイトを担う科目です。
そのため、ここで点数をどれだけ稼ぐことが出来るかで一気に合格に近づくことが出来ます。

少しでも不安を取り除きたい人は今回紹介した


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に目を通してしっかりと点数を稼いでいきましょう。

核医学に苦手意識を持たずに、頑張っていきましょう

医学物理士になろう 試験勉強から合格までの道のりまとめ

 

 

 

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